奥多摩旅行記 その5(全18回)
八王子行きの列車が去ると、ホームドアのバーが静かに下降した。近未来的な光景だ。隣の線路に止まっていた回送列車の写真も撮影して、青梅線乗り場へと移動する。これから乗る列車の来る乗り場には、まだ立川行きの列車が止まっていた。それが去ると、向かいの乗り場には五日市線の武蔵五日市行きの列車がやって来た。ここを行き交う青梅線や五日市線の列車は、全て中央線と同じ形式のステンレス製の新しい電車だ。中央線系統の代名詞とも言えるオレンジ色の電車は、もう随分と昔に過去帳入りしてしまった。今では奥多摩の大自然の中をステンレス製の電車が行き来するという不釣合いとも思える光景が展開されている。
武蔵五日市行きの列車が発車すると、その後を追うようにしてこちらの乗り場に青梅行きの列車がやって来た。立川駅から来た列車なので、やや混み合っていた。それでも、何とか席を確保する。青梅線に乗るのも久しぶり。最近では、昨年、横田基地の近くを歩いた際に福生駅から拝島駅まで乗ったことがある。その3年ほど前には、ちょっとした口車に乗せられて、ある企業を見学するために小作駅まで行ったことはあるけれど、そこから先を走るのはいつ以来なのか、全く覚えていない。
青梅行きの列車は、定刻通りに拝島駅から発車した。近況を語り合いながら列車に揺られる。車窓からの風景は、郊外の住宅地。そんな中を進んで行くと、やがて列車は小作駅に着いた。
「ここまで通勤するのは大変そうだな……」
企業見学のためにここまで来たことがあると話すと、Mさんはそう言った。
拝島駅から奥多摩駅までは、30分もあれば行けてしまうという印象があった。ところが、事前に時間を調べてみると1時間近くもかかってしまう。随分と遠くへ行くこととなる。この小作駅まで来るのに、10分ほど要している。ここから青梅駅までは、さらに10分ほどかかる。列車は相変わらずの郊外という感じの風景の中を行き、河辺、東青梅の両駅に止まって終点の青梅駅に到着した。ここで奥多摩行きの列車に乗り換える。すでにその列車は向かいの乗り場に停車しており、静かに発車の時を待っていた。
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