奥多摩旅行記 その4(全18回)
第3章
Mさんはもう来ているだろうか?駅舎から待ち合わせ場所のコンビニが見えたけれど、Mさんの姿は見えなかった。だが、姿が見えなかっただけのようで、実際に行ってみると背が高くヒョロヒョロした感じの男性いた。Mさんだ。そちらに向かって手を振ったけれど、気がつかない。辺りの風景の撮影に熱中しているようで、僕がコンビニの前でタバコを吸い終えたところで、ようやく僕に気づいた。
口々に久しぶりと言いつつ、コンビニの裏手にある線路の撮影に向かう。近くに、電化されていない単線の線路がある。拝島駅から出ている在日米軍横田基地への線路だ。京浜工業地帯にある米軍施設から来たジェット燃料を輸送するための貨物列車が通る。タンク式の貨車が用いられることから、鉄道ファンの間では〝米タン〟と呼ばれている。軍事関連の列車という特性上、ダイヤは明かされていない。すぐに列車が行き来する様子はなく、まるで廃線跡のような雰囲気を醸し出している。撮影している踏切の脇には、英文も併記されている立ち入り禁止の看板があった。
線路の撮影を終え、コンビニで買い物をする。缶チューハイが買いたかったけれど、見当たらない。仕方がないので、缶のハイボールを買う。店の前でタバコを吸いながらハイボールを飲む。
「アルコール消毒か?」
Mさんが言う。どこでそんな酒飲みが言うような言葉を覚えたのか。風邪をひいている時のハイボールはまずい。
一服と〝アルコール消毒〟をしながら、Mさんと談笑を交わす。今朝、名古屋からの高速バスで東京に着き、高田馬場駅からの急行列車でここまで来たらしい。Mさんが着いたのは、僕が着く10分ほど前だったようだ。急行列車が混んでいる様子に、さすが東京だと驚いたという。
さて、一服と〝アルコール消毒〟が終わったので、そろそろ奥多摩へ向かおう。まずは青梅行きの列車に乗る。Mさんと合流するのが早かったため、1本前の列車に乗れそうだったが、それでは何だかせわしないので、予定通りの列車で行くことに。15分ほど時間が空く。せっかくだから八高線の列車の撮影をしたいとMさんが言う。八高線乗り場へ行くと、八王子行きの列車が停車していた。
この駅の八高線乗り場には、線路への転落防止用のホームドアが試験的に設置されている。ホームドアもいろいろあるが、この駅にあるのは列車が来ていない時は乗車口の辺りだけ3本のバーで仕切られており、列車が来た時にそれが上昇する仕組みのタイプだ。面白いものが見られたけれど、列車だけの写真を撮ることはできなかった。
0コメント