夕焼けの駅 1(全3回)

 ガタンガタン、ガタンガタン……

 下り列車が去って行くと、誰もいない都会の小さなローカル駅は、すっかり静まり返ってしまった。列車からは誰も降りて来なかったし、列車に乗る人も誰もいなかった。僕だけがたった一人。ベンチに座ってぼんやりしている。多分、今日も来ることはないであろうあのひとを待ちながら。

 冬の午後。三時半を回った頃だ。まだ夕方と言うには時間は早い。けれど、この時季は日が暮れるのも早い。小さな駅を見下ろす空は、ほんのりと夕陽の色に染まりつつあった。冬の冷たい風が、音もなくただふんわりと通り過ぎて行った。

 十分、十五分と、時間が刻み込まれて行く。このまま僕は、ここであのひとを待っているうちに朽ち果てて行くのだろうか?そんなとりとめもないことを考えてしまった。

 カンカンカンカンカンカン……

 ぼんやりとした時の中、向こうの踏切の警報機が鳴り始めた。それに呼応するように、目の前の踏切の警報機も鳴り始める。東の方角から、ガタゴトと音を立てて上り列車がやって来た。銀色の三両編成の列車は、静かにゆっくりと向かいの乗り場に止まると、またガタゴトと音を立てて去って行った。それに続いて警報機の音も鳴りやみ、小さな駅は、また静寂に包まれる。まるで、列車なんて来なかったかのように。

 どうやら上り列車からは誰も降りなかったようだ。さっきからずっとこの駅にいたのは僕だけなので、当然、列車に乗った人もいないということになる。列車が来て去って行っても、この駅には相変わらず僕しかいない。まるで地球上から人間が誰もいなくなってしまったような、そんな感じすらする。

 空を見上げる。何本もの電線と、果てのない空。その空を染める夕陽の色が、さっきより少し濃くなっただろうか。そう思ったその時だった。

 ゴトッ、ゴトッ……

 静寂を切り裂くように、向こうの踏切を大型トラックが渡って行く。その様子を見て、ちゃんと地球上に人間がいるのだな、と安心した。しかし、それもほんの一瞬のこと。すぐのこの小さな駅は、再び空虚な静寂に包まれた。

〈どうして僕は、ここであのひとを待ち続けているのだろう……?〉

 そんな疑問で、頭の中はすっかり埋め尽くされていた。あのひとを待っている間に、その疑問に対する答えを少し考えてみることにした。恐らくは、考えるだけで終わってしまうのだろうけれど……

 僕は学生ではない。なので、通学の電車であのひとを見かけて淡い恋心を抱いたとか、そんな青春めいたものではない。だからと言って、待ち伏せだとか、そういう何か犯罪めいたものでもない。ある時に見たほんの一滴だけの涙が、僕をこうさせている。思い返せば、あれは晩秋のできごとになるだろうか。

Kazu-Photo-Novel

主にKazuが撮影した写真と執筆した文章を載せています。 ゆっくりと楽しんでいってください。

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